
2026年9月5日・6日にグランキューブ大阪(大阪国際会議場)で開催された、第24回日本神経理学療法学会学術大会に参加しました。
今回の大会テーマは、「神経理学療法が紡ぐ足跡と新時代」。これまでの神経理学療法の歩みを振り返りながら、脳科学やデータサイエンスなどの新たな知見、さらには患者の経験や語りをどのように臨床へ統合していくのかを考える、多彩な企画が組まれていました。
私は、初日には基幹シンポジウム1 「可視化される神経機能と運動:『人間らしさ』を支える神経理学療法」 の座長を務めました。
シンポジウムの総合討論では、これらを「神経活動を観る」「運動を測る」「多様性と治療反応をデータから捉える」という連続した視点として捉え、回復と代償をどう考えるのか、可視化された情報を治療選択へどうつなぐのか、そして“個別化”と“その人らしさ”をどう統合するのかについて議論しました。データが増えるほど臨床判断が自動化されるのではなく、それらを患者一人ひとりの目標や生活に結びつけて解釈する臨床家の役割は、むしろ大きくなるのではないかと感じています。
2日目には、『神経理学療法学講義―脳卒中編―』出版記念シンポジウム「神経理学療法学をどう学び、どう伝えるか」に、座長及びシンポジストとして登壇しました。
本書に込めた企画意図や、神経メカニズム、脳画像、臨床症状、ガイドラインといった異なる知識をどのようにつなぎ、臨床で活用していくのかについて、執筆者の先生方と議論する機会となりました。
今回の大会を通して繰り返し考えたのが、Science / Art、Evidence / Narrative、標準化 / 個別化を、どのように往還するかということでした。
8年前の第16回大会も、同じ大阪国際会議場で開催されました。
その際、森岡周先生がMinimal SelfとNarrative Selfという二つの自己のあり方を示された講演を聞き、二者択一では捉えられない時代になったことを強く感じたのを覚えています。
今回、森岡先生の基調講演「神経理学療法はどこへ向かうのか―機能回復から自己再構成へ―」を聞き、Narrative Embodimentという枠組みを通して、8年前の問いがさらに一体的・動的なものへ展開していることを感じました。
基調講演をはじめ、大会全体にも、機能やデータだけでは捉えきれない患者の経験をどう扱うかという問題意識が通底していたように思います。
これからは、平均的な治療効果だけでなく、平均値の中に埋もれてきたNon-responderや、これまで研究対象から除外されてきた症例、さらには「功を奏さなかった」臨床実践にも目を向け、それらを文脈とともに丁寧に記述・分析していくことが、より重要になっていくことと思います。
8年前と同じ会場で、神経理学療法が歩んできた「足跡」を振り返りながら、その先にある新たな問いについて考える2日間となりました。
準備・運営にご尽力くださった皆様、各セッションでご一緒させていただいた先生方、そして参加者の皆様に、心より感謝申し上げます。